ジェフL 若林美里が語る仕事とサッカーの両立

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ジェフL 若林美里が語る仕事とサッカーの両立

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“仕事とサッカーの両立”をテーマに、ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(以下:ジェフL)の選手にスポットを当てるこの企画。第9弾は、若林美里選手(26)に登場をしてもらいました。

仕事を通して、お客さまが満足される接客に注力し「また、この店に来たい」と思ってもらうための、おもてなしサービスを心がけ、サッカーでは、サイドラインを縦横無尽に走り切り、チームに流れを呼び込むプレーを心がけている若林選手。

現役のなでしこリーガーとしてサッカーを続けながら仕事を両立させていく秘訣に迫ります。

人に恵まれた中での両立

ーー現在の仕事の内容、そして1日の予定や1週間の流れを教えてください。

私は、(株)メガスポーツが運営するスポーツオーソリティ幕張新都心店で仕事をしています。基本は、週4日勤務で、午前9時から午後4時まで働いています。意外かもしれませんが、めちゃめちゃ働いていますよ(笑)。仕事内容としては、店頭に立ち接客・販売をメインとしながら、アスリートの立場からサッカーを教えるワンポイントアドバイスなど、「コトの提供」をしています。また、この場所は、フットサルコートも併設しているので指導も行っていますし、学校などへ訪問し、サッカー教室を実施するなどの出張サービスもやっています。もちろん入荷商品の品出しから棚卸準備もしています。

ーーお客さまと“接客”をする上で注意している点を教えてください。

毎回の接客で、「この人に商品を選んでもらって良かった」と思って帰ってもらうことです。私がモノを購入するとき、店員さんから良い接客を受けると気持ちが良いですし、その際、十分なインフォメーションなどがあればさらに嬉しく、得した気分になります。だからこそ私は笑顔で帰ってもらうことを意識していますね。

ーーこれまでの中で一番、嬉しかったエピソードを教えてください。

サッカー初心者の方、競技力向上を目的とする方、ジェフLの選手だと知って来店してくれる方もいますし、お店での接客で知り合った方が、何度も足を運んでくれることもあります。例えば、静岡県在住の子が、小学校の長期休みに千葉に帰省していて、たまたま来店をして「サッカーを教えてくれるんですか?」と。それがきっかけとなり、長期休みになると毎回来店してくれています。また、自分の試合の報告に来てくれる子どもも多いですし、リフティングを数回しか出来なかった子が、数か月後、私のアドバイスで、何百回も出来るようになったなど、子どもの成長を見ていると、私自身も学ぶこともあります。サッカーが純粋に好きで、素直に向き合うことなど勉強をさせられますね。

ーーリラックスする時やオフの過ごし方を教えてください。

私はTVのスポーツニュースが大好きなのですが、一日の終わりに、その日のスポーツニュースを見ることがリラックス方法ですね。インターネットで情報を知るよりも、TVでニュースを見ることが好き。サッカー、プロ野球、ゴルフ、卓球、バドミントンなどあらゆる結果を確認して、「これで一日の終わりだ」と思って、眠りにつきますね(笑)。(オフの過ごし方は)普通に家で掃除をしています。とにかくサッカーのために、体を休めています。家で愛犬と一緒に、ゆっくりとのんびり休んでいますね(笑)。

ーー会社の上司や同僚の理解についてはどう感じていますか?

体調のことやサッカーのこと、どんな時でも、会社の皆さんが嫌な顔をせずに、対応をしてくださります。人に恵まれています。皆さんに可愛がって頂き、感謝しきれない思いです。競技を続ける上でも、店頭で働く上でも、それは大きなモチベーションとなっています。

ーーファッション、美容・健康などで一番興味があるものはなんですか?

ファッションは小さい頃から好きで、親が買ってきても自分が気に入らなかったら一切、着ないほどでした。モノを大事にする方なので長いこと愛用しているものがかなりあります。納得しなければ絶対に買いませんね(笑)。

ーー食事面で気を付けていることはありますか?

美容と健康につながる部分もあるので、食事には気を付けています。人工的な糖分や食塩はなるべく摂らないようにして、自然なもので摂ること、パフォーマンスにつなげるための食べるタイミングなどに気を使っています。

ーーでは、仕事とサッカーの両立について、充実している点を教えてください。

働きながら自分が好きなサッカーに取り組むことに意味があると感じています。仕事で大変な一面もありますが、サッカーを離れた時に、活きるであろうことをたくさん学ばせてもらっています。“企画書を作り、予算を計上し利益を考え、それをフィードバックする”。この経験は働いてみなければ分かりません。社会人としての深みを知ることで、これからの生活、これからの人生やキャリア、そしてサッカー人生にも役立つと思っています。

第2の故郷“福島”への思い

ーーサッカーを始めたきっかけについて教えてください。

父が元々サッカーをやっていたのですが、だからといって強制してやらせようと思ってはおらず、何かしらのスポーツをしてくれたらと考えていたようです。父と公園で遊ぶ時に、サッカーになると熱が入るので嫌でしたね(笑)。それから小学校に入り、周りの仲の良かった男の子たちがサッカーを始めたので私も地元のチームに入ったことがきっかけとなりました。そして、小学校卒業のタイミングで親元を離れ、JFAアカデミー福島のプログラム*¹に参加をしました。

*¹:日本サッカー協会が福島県、広野町、楢葉町、富岡町と連携して中学・高校時代の6年間を対象にサッカーエリートを養成するシステム。地元の公立学校に通学し放課後にJヴィレッジアカデミーでサッカーやその他教育を受ける。

ーー小学生の時から、将来はサッカー選手になりたいと考えていたのですか?

JFAアカデミー福島に入ったきっかけもそうなのですが、なでしこジャパンのメンバーに入りたいこと、そして海外で活躍する選手になりたいという憧れがありました。小学生ながら単純だったかもしれませんが、最新の施設と最高の指導者の下でサッカーが出来るということで迷いなく福島に行きましたね。濃密な6年間だったと思います。

ーー高校2年生の時に、あの東日本大震災があり被災を経験しましたね?

原発事故の影響を受け、寮が20キロ圏内、高校は10キロ圏内にあったので大変でした。そして余震が続く中、3日間、寮と地元の体育館で避難生活も経験しました。寒い時期でもあり、毛布1枚に3人というような状態。寒さのあまりストーブが消えた瞬間に目が覚めもしました。「こらからどうなるのだろう?」と、先が見えない状況で不安がつきまとった時もありましたが、その1カ月後に活動拠点が静岡県御殿場市に移転。環境も大きく変化をしましたが無事に卒業を迎え、アルビレックス新潟レディースに加入し、その後、ジェフLにお世話になっている状況です。

ーーその中、4月20日にJヴィレッジ駅のオープン、そしてJヴィレッジの営業再開を記念する復興試合が行われましたが、特別な思いがあったのではないでしょうか?

お世話になった中学校の先生も見に来てくれていました。あの時代があるからこそ、今の私がサッカーをしっかり続けられています。感謝の気持ちをピッチで伝えようと一生懸命にプレーし、それが1-0の結果となり勝てたので嬉しい気持ちで一杯となりました。あの1勝は人生の中で大きな価値のあるものとなりました。

ーー復興はまだ遠いものかもしれませんが、1日でも早い復興を願いたいですね。

私にとって福島は第2の故郷です。復興はまだまだ先になる部分もあると思いますが、少しずつ良くなっていくことを願うばかりですし、私に何か出来ることがあれば協力をしたい思いです。

アシストだけではなく、得点に絡むプレーを増やす。

ーーリーグ前半戦は5位(4勝3分2敗)、首位チームとは勝点3差ですが、振り返ってください。

リーグ前半戦を振り返ると、勝点が表すように良いところに付けています。私たちが勝ち切れない試合もありましたが、良い部分を出せた試合もありました。ここからスタートをする後半戦で、どれだけ優勝争いに食い込んでいけるかが重要です。流れの中で得点を取れていることは昨年と比べると成長をしている点です。一方でセットプレーでは無得点。セットプレーはチャンスな状況でもあり、そこで1点も取れていないことが課題です。以前はセットプレーのチャンスで得点をして勝ってきたチームでもあるので大きな修正が必要です。逆にセットプレーで失点をしているのが目立つので、改善する必要があると言えます。

ーーセットプレーは、ポジション取りやタイミング、キッカーの質もありますが気持ちの部分も大切になりますね?

本当にそれはあります。高さはありますが決め切る強さがない。自分たちが想定し、そこに良いボールが来れば決められるところはあります。しかし実際はそうならず、ズレながらでもゴールに押し込む力が弱いことが、セットプレーでの無得点につながっていると思います。(セットプレーからの失点についても)相手が連係しているところに個で対応してしまい上手く戦えていない部分はあると思います。相手が工夫してくる中で技術と気持ちがポイントになってくると感じます。

ーーサイドで縦関係となる鴨川実歩選手と意識しているのはどんな点でしょうか?

彼女は攻撃が得意な選手なので、守備での負担をかけさせないことを意識しています。出来る限り私が守れるところは1対2の状況でも守ります。ボールを奪った後に声をかけ、良い位置に入れるポジショニングをさせます。(連係は)右サイドのオープンな場所で受けながら逆に振れるようにと意識しています。大きなサイドチェンジが出来れば相手も付いてこられないシーンもあるので、そこで裏返して決めてもらう。あとは自分たちの仕掛けから深い位置を取ってクロスや仕掛けて終わる攻撃をすることがチームにとってプラスとなると考えます。

ーー試合を見に来てくれたサポーターに“私のここを見て”というポイントはありますか?

最後まで諦めない体を張った守備と駆け引きをするポジショニング。あとはどれだけ深い位置まで攻撃参加して行く運動量を皆さんには見て欲しいですね。

ーー後半戦に向けての意気込みを教えてください。

リーグ戦では優勝を狙える良い位置にいます。上位でシーズンを終わることを目標にしていますが、最後まで優勝争いが出来るチームでありたいですし、日々のトレーニングから、しっかりと取り組んできたことを結果として出すことを念頭において頑張って行きます。また、後半戦はアシストを狙うだけでなく得点を取りに行きたいと思います。得点に絡むプレーを増やそうと思っているのでワンプレーを大事にしたいです。

ーー最後に訊きます。あなたにとってサッカーとは、どんな価値のあるものなのでしょうか?

自分の人生そのものですね。若林美里という人間を成長させてくれるものです。