「見る」ウエイトリフティング。世界中で人気急増中の秘密は。

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「見る」ウエイトリフティング。世界中で人気急増中の秘密は。

スポーティ

11月1~10日にウエイトリフティング(重量挙げ)の世界選手権がトルクメニスタン共和国アシガバットで開催されます。日本からは三宅宏実選手(女子49キロ級)、八木かなえ選手(女子55キロ級)らの人気選手も出場します。

世界選手権大会は、毎年1回、開催地を変えて行われます。第1回大会は、1891年ですから120年以上の歴史を持つ伝統ある大会です。女子競技の歴史は、比較的新しく1987年から始まりました。昨年の開催地は、カリフォルニア州アナハイムでした。元祖ディズニーランドがあり、大谷翔平選手が所属するエンゼルスが本拠地を置く、あのアナハイムです。


2017年世界選手権会場

競技の仕組み。見逃せない選手間の駆け引き。

ウエイトリフティングはスナッチとクリーン&ジャークの2種目を行い、合計挙上重量を競います。スナッチは床に置かれたバーベルを1挙動で頭上に持ち上げます。クリーン&ジャークは同じく床に置かれたバーベルをまず肩まで持ち上げ(クリーン)、次に頭上に持ち上げます(ジャーク)。選手はどちらの種目も3回試技を行い、成功したうちの最大重量がその選手のスコアになります。3回とも失敗すると失格です。
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八木かなえ選手のスナッチ(2018年アジア大会)

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高橋いぶき選手のクリーン&ジャーク(2018年アジア大会)

選手たちは、自分が挑戦する重量をあらかじめ申告して、その重量の軽い順番で試技を行います。申告した重量は直前に変更が可能なので、目まぐるしく選手の順番が入れ変わっていきます。つまり、選手Aが100キロを申告していて、ライバル選手Bが99キロを申告していたとします。

本来なら選手Bが先に試技をする順番なのですが、選手Bが試技直前になって101キロに変更する、なんてことが可能なのです。そうなると試技の順番が入れ替わり、急に選手Aの順番になってしまうのです。そこで選手Aは慌てて事前申告通りに100キロに挑むか、それとも102キロ以上に変更することが可能で、そこが駆け引きです。後者を選んで順番を守っても、102キロに失敗してしまったら記録はゼロになってしまいます。

試技の制限時間は1分。重量変更を申し出るのは試技の30秒前まで。選手とコーチはその短い間に選択を迫られます。会場の電光掲示板にはその時点の順位と試技の順番が表示され、刻一刻と変化する状況に、観客の興奮はかきたてられます。

アナハイムの世界選手権大会会場は、満員の観客で大いに盛り上がりました。伝統的にアジアや東ヨーロッパの諸国が強い競技だということを反映して、それぞれの国の選手を応援する集団も目立ちました。


ショーアップされた会場


タイ国の選手を応援する人達

ウェイトリフターはスーパーアスリート。

この大会で女子53キロ級に出場した日本の八木かなえ選手は、スナッチで85キロ、クリーン&ジャークで110キロ、トータル195キロで6位に入賞しました。この競技を見慣れていない人にはピンと来ないかもしれませんが、これはクロスフィットで少なからずウエイトリフティングの経験がある私からすると、驚異的としか言いようがない記録です。

私の体重は約60キロ。スナッチの最高記録は67キロ(体重比107%)、クリーン&ジャークの最高記録は84キロ(体重比137%)です。ジムで一番、とまでは行きませんが、一般人としてはさほど恥ずかしくはない、素人とは言えないレベルです。

ところが、八木かなえ選手は、スナッチで体重比160%、 クリーン&ジャークで体重比208%。この数字がどれだけ凄いことかわかってもらえるでしょうか。軽量級の女子でもそうなのですから、女子でも重量級や男子ともなると、選手達が挙げる重量はさらに信じがたいものになります。まさに超人達の集まりです。

ところで八木選手と言えば、愛くるしい笑顔で人気ですが、この体重の選手たちは、みな同じような感じです。もちろん近づいて見れば鍛え抜かれた筋肉なのでしょうけど、遠くから選手紹介を見ると、小柄な女の子が並んでいるようにしか見えません(右端が八木選手です)。ソフトボールとかバスケットボールとかの選手の方がよっぽど見た目はたくましいのではないでしょうか。

アメリカで人気急増中の背景にクロスフィットあり。日本でもブームが来るか。

ウエイトリフティングは、東京オリンピックでも日本勢のメダルが期待される競技ですが、残念ながら現時点では、あまり世間に知られているとは言えません。メダリストの名前ぐらいは聞いたことがあっても、実際にウエイトリフティング競技を観たことがある人、ましてや、やったことがある人は少ないのではないでしょうか。

アメリカでも10年ぐらい前までは、日本と似たような事情でしたが、最近ウエイトリフティングの注目度が上がって、各地で行われている大会の出場者も急増しています。大手経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、2017年11月22日付の記事で、米国ウェイトリフティング協会の会員数が、2012年と2016年のオリンピックの間に11,100人から26,000人になったと調査結果を発表しています。

同紙によると、その背景には、クロスフィットの人気拡大があります。多くの人がクロスフィットで、初めてウエイトリフティングに接する機会を持ちました。そのうちの少なからぬ人が、ウエイトリフティングに本格的に取り組み始め、そうでなくてもオリンピックなどでこの競技に注目するようになりました。日本でもクロスフィットが広まるにつれ、ウエイトリフティングの人気や注目度も比例して伸びていくかもしれません。

 


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