ランにメリハリをつけて、マラソンシーズンに向けて走力アップ!
DOランにメリハリをつけて、マラソンシーズンに向けて走力アップ!
冬になり、本格的な市民マラソンのシーズンに入りました。来年3月3日に行われる東京マラソンの抽選に当選した幸運なランナーを始め、いよいよ目標とする本番レースまで数か月を切った人は多いのではないでしょうか。
多くのランナーは月間走行距離○○キロといった目標を立てますが、ただ漠然と日々の距離を増やすより、いくつかの種類のランを組み合わせて、メリハリをつけたトレーニングをすると効果が上がり、且つケガのリスクが軽減します。
米国の高校でクロスカントリー部を指導する筆者が、代表的なランの種類と具体的なトレーニング計画例を紹介します。
走行距離信仰の呪縛から逃れる
ランナーと会話していると必ずのように持ち出されるのが「月に何キロ走りますか?」あるいは「月に何キロ走ったらフルマラソンを完走できますか?」という話題です。
そこからお互いのレース経歴、自己最高記録、故障歴と会話は続いていきます。こうして自己紹介代わりに使われるように、ランナーにとっての月間走行距離とは、努力の証明なのです。当然のことながら、月に300キロ走るランナーは、200キロ走るランナーより、相当頑張っているということになります。
ランナーとしての土台を作るという意味では、週に何キロ、あるいは月に何キロといった走行距離の目標を立てて、それに向けて努力するのは、長い目で見ると悪いことではありません。ですが、本番レースの数か月前ともなれば、「量」から「質」へとトレーニングの変換をはかるべき時期であることを知るべきです。
なぜなら、本番が近づくと誰でも張り切ってしまうもの。「量」だけのトレーニングをしている人は、その量を増やすことだけにしか意識が向きません。
今まで月に100キロ走ってきた人は、来月は頑張って150キロ、その次は200キロ走ってみようと思ってしまうのは自然です。そうしてやみくもに走行距離を伸ばしていくと、行きつくところは疲労の蓄積と故障リスクの増大です。そしてその割には走力アップの効果はあまりありません。
ランの種類とその目的
ランに限らず、トレーニングの「量」より「質」を重視するうえで、それぞれの目的を理解することはとても重要です。下は長距離ランナーが行う代表的なランの種類と目的を一覧にしたものです。
ランの種類 | ||
1. リカバリー・ラン | 5~8キロ: ジョギングよりゆっくりしたペース | レースやハードな練習による疲労からの回復 |
2. ペース・ラン | 8~12キロ: ジョギングペース | 心肺能力と持久力の向上 |
3.ロング・ラン | 25~30キロ: ジョギングよりゆっくりしたペース | 持久力の向上 |
4.プログレッション・ラン | 8~12キロ: 前半4~6キロをジョギングペース、後半からゴールまで2~3段階に分けてペースをあげる | 高い負荷による走力向上 |
5.ファートレック | 8~12キロ:前半4~6キロをジョギングペース、後半を1分ごとに早いペースと遅いペースを交互 | 高速ペース習得と回復力の向上 |
6.坂道インターバル | 5~8キロ: 前半1~2キロをジョギングペース、100~300メートル程度の坂道を全速で10回インターバル | 筋力と心肺能力の最大化 |
7.テンポ・ラン | 8~12キロ: 最初の1~2キロをジョギング、6~8キロをレースより速めのペース、最後の1~2キロをジョギング | 高速ペース習得 |
トレーニング計画の立て方
個々のペースや距離によって変化しますが、基本的には1から7までの順番で体への負荷が重くなります。負荷の高いトレーニングを毎日行うのは無理ですし無謀でもありますので、週何回かを強化練習の日にあて、その間を軽めの練習で回復を図ることになります。
例を挙げると、下記のような1週間のスケジュールになります。
月:休み
火:ベース・ラン
水:坂道インターバル(*)
木:リカバリー・ラン、または休み
金:テンポ・ラン(*)
土:ベース・ラン
日:ロング・ラン(*)
(*)が強化練習日
上はあくまで例ですが、このようにして、ランのペース、距離、時間に変化をもたせ、トレーニングにメリハリをつけることで、効率よく能力を高め、またケガのリスクを軽減することが可能になります。さらには精神的な飽きを回避することにも繋がります。
計画はあくまで計画
こうしてトレーニング計画を立てることは大切ですが、実際には100%その通りにトレーニングが出来ることはめったにありません。長い間には、雨や雪が降ったり、急に仕事が忙しくなったり、思わず前夜お酒を飲み過ぎてしまったり、単純に体が疲れて走る気になれなくなったりするからです。
そんなときに月間走行距離○○キロのような目標を立てていると、真面目で熱心なランナーほどそのために帳尻を合わせようと無理をしてしまいがちです。
計画はあくまで計画です。1日予定が狂ったからと言って、それまで培ったトレーニング効果がなくなるわけではありません。その意味でも、トレーニングの目標として走行距離を設定する考え方を変えていく必要があります。