スポーツ時の熱中症を防ぐために知っておきたいこと

スポーツ時の熱中症を防ぐために知っておきたいこと DO

スポーツ時の熱中症を防ぐために知っておきたいこと

スポーティ

2020年の夏は、全国的に平年よりも高温傾向だと予想されています。

梅雨の後半は、10年間平均よりも涼しい日が多かったため、梅雨明け一気に気温が上がるとなると、例年以上に熱中症になりやすい環境となります。さらに今年は、新型コロナウイルス感染対策でマスクを付けることが多いため、より熱中症への警戒が必要です。

体が暑さに慣れていない時期は、暑さに対する抵抗力が低いため、今年の夏(梅雨明け)は特に注意が必要です!

また、スポーツにおける熱中症の多くは、知識を持ち、無理をしなければ防ぐことができます。スポーツをしている方は、健康で体力に自信のある方も多いと思いますが、過信せず、これまでのトレーニングを無駄にしないためにも、熱中症対策について知り、環境に合わせたトレーニングと水分補給を行うように心掛けましょう。

トレーニングによって疲労が溜まっていたり、睡眠不足、栄養不足などでも熱中症になりやすくなることを心に留めておきましょう。

私は、陸上競技やマラソンを長年継続してきましたが、20代前半の若かった頃にハーフマラソンレース中に熱中症になり、突然意識を失って倒れたことがあります。

最後の1kmを切っていたことは後に思い出したのですが、気が付いた時は救護テントで横になって処置を受けていて、今日どこに何をしに来ていたのかも、日付などもなかなか思い出せず、記憶障害もありました。

食事も水分も体が受け付けず、しばらくはトレーニングどころではなく、吐き気などの症状に襲われ、思い出せないままの記憶もあります。

大好きだったマラソンですが、この時は命の危機を感じ、走ることが怖くなったことを思い出します。この熱中症も、自分は大丈夫だと過信せず、前日やレース中の水分補給にもっと気を配っていれば防げたものだと思っています。

環境条件と運動の基準

公益財団法人日本スポーツ協会発行『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』より

公益財団法人日本スポーツ協会が、環境温度に応じ、どのように運動したら良いかの目安を示しています。この指針を頭に置いて、トレーニングを考えることが大切です。

環境条件を評価するには、暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度)を使用するのが最適で、この値は、乾球温度や湿球温度から推定値を計算することができますが、環境省HP内の熱中症予防情報サイト“暑さ指標(WBGT)の実況と予測” で、今日から3日間の暑さ指標(WBGT)の実況推定値と予測値が公開されていますので、是非ご活用ください!

分かりにくいという方は、下記の乾球温度(気温)が分かりやすい指標になるかと思います。

・気温24℃未満:ほぼ安心。
・気温24℃以上:注意(積極的に水分補給)。
・気温28℃以上:警戒(積極的に休息)。
・気温31℃以上:厳重警戒(激しい運動は中止)。
・気温35℃以上:運動は原則中止。

となりますが、ここで注意が必要なのが”湿度“です!
例えば、気温が28℃であっても、湿度が80%以上あるような場合には、汗が蒸発しにくく熱中症になりやすいため、熱中症予防運動指針の1ランク厳しい指針を適用し、“厳重警戒(激しい運動は中止)”となります。

暑い中で無理をし、激しいトレーニングを行っても効率が悪く、トレーニング効果は期待できません。夏場の練習では、できるだけ暑い時間帯や場所を避け、小まめに休憩を取りながら、喉が渇く前に水分を摂るなど対策をすることで、体調を維持し、強度の高いトレーニングは、涼しい環境下で行うようにしましょう。

強度を上げたい場合には、暑くなり始めたら順化期間を設け、一気に強度を上げるのではなく、徐々に上げていくようにしましょう。

市民マラソンのための環境条件と運動の基準

“市民マラソンのための運動指針”というものが、“熱中症予防運動指針”と別に設けられています。これは、マラソンは熱負荷の大きい運動なため、一般のスポーツ活動よりも熱中症が発生する危険性が高いためです。ランナーの方はこちらを参考にしてください。

■WBGT 10℃(気温13℃)未満
熱中症の危険度“低い”
低体温症の危険性がある。
雨天、風の強い日には特に注意が必要。

■WBGT 10℃(気温13℃)以上
熱中症の危険度“低い”
ただし熱中症が起こる可能性もあり注意が必要。 

■WBGT 18 ℃(気温15度)以上
熱中症の危険度“中等度”
レース途中で気温や湿度が上昇すると危険性が増すので、注意。
熱中症の兆候に注意し、必要ならばペースダウンする。

■WBGT 23 ℃(気温20度)以上
熱中症の危険度“高い”
熱中症の危険性が高く、厳重注意。
トレーニング不足の場合は出場取消。

■WBGT 28 ℃(気温31℃)以上
熱中症の危険度極めて“高い”
熱中症の危険性が極めて高い。出場取消。

※気温は参考として入れていますが、“熱中症予防運動指針”と同様に、気温を参考にする場合には湿度が高い場合には1ランク厳しい指針を基準としましょう。

水分補給のポイント

運動中、失った水分や電解質(=ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウム、クロールなど水に溶け、イオンとなるミネラル)を補給することで、体温の上昇を抑え、パフォーマンスの低下を防ぐことができます。また、適切な水分補給は疲労を遅らせ、回復を促進してくれます。
   
運動時の水分補給のポイントをいくつか紹介します。

■喉が渇く前に、小まめに補給する!
喉が渇いたと感じる時には、既に体の1%程度の水分が失われ、脱水が始まっているため回復に時間がかかってしまいます。また、一度にたくさんの量を飲むと、多くは吸収されずに体外に出てしまい、腹痛の原因になることもあります。

■5℃~15℃、冷蔵庫で冷やした程度の水温が適切!
吸収の面、飲みやすさの面からも「冷たい」と感じる5℃~15℃が適温です。冷たすぎる飲料は胃腸を刺激したり、内臓機能の低下に繋がり、腹痛の原因となることもあります。ただし、温くなると吸収されにくくなってしまうので、暑い時には凍らせたものも用意しておき、調節してあげると良いでしょう。

■運動の前と後で体重減少が2%以内を目安にする!
体重の2%以上の脱水になるとパフォーマンスの低下が起きてきます。運動直後に「〇kg痩せた!」と喜ぶ方を目にすることもありますが、これは脂肪が燃えて痩せたというよりは、ほとんどが失われた水分になります。可能な方はトレーニング前とトレーニング後に体重計に乗り、失った水分量を確認すると良いでしょう。

■水分の摂り過ぎにも注意が必要!
塩分の少ない水分を必要以上に大量に飲むと、体液が薄まってしまい低ナトリウム血症(水中毒)になることがあります。軽症では倦怠感や吐き気、嘔吐、筋肉が攣るなどの症状がみられ、重症になると呼吸困難や意識障害などが起こり、アメリカの市民マラソンにおいて死亡例もあります。特に低体重の方や、発汗量の少ない冬場の大会などは注意が必要です。

■環境条件や運動強度に適した組成にする。
運動時には、水分だけではなく電解質も失われます。失った水分と電解質、さらには水分の吸収を良くしてくれる適度な量の糖質も同時に補給すると良いでしょう。

糖質はエネルギー補給の面からも効果があります。市販されているスポーツドリンクや経口補水液にもたくさんの種類があります。発汗量や運動強度などによって種類を使い分けたり、薄めて飲むなど調整すると良いでしょう。次の「“スポーツドリンク”と“経口補水液”の違い」に詳しく書いています。

スポーツドリンク”と“経口補水液”の違い

■スポーツドリンク

水分、電解質、糖分を吸収率の良いバランスで配合した飲料です。組成としては、発汗量や運動量が多い場合は塩分0.1~0.2%、糖分4~8%を含むもの、発汗量や運動量が少ない場合には水または4%以下の糖分を含むものが良いでしょう。経口補水液に比べて、電解質(塩分)が少なく、糖分が多いのが特徴です。また、スポーツドリンクは“アイソトニック飲料”と“ハイポトニック飲料”の2種類に分けることができます。

・アイソトニック飲料
安静時の体液とほぼ同じ濃度や浸透圧で作られているため吸収されやすくなっています。しかし、発汗によって体液が薄まっている状態だと吸収に時間がかかるので、運動前や運動後に飲むと良い飲料です。
組成としては、塩分0.1~0.2%程度、糖分4~6%程度のものが市販されています。

・ハイポトニック飲料
安静時の体液よりも低い浸透圧で作られていて、塩分や糖分の濃度が低くなっています。発汗している運動中や運動直後に飲むと吸収が速く適しています。ただし、エネルギー補給としてスポーツドリンクを使う場合にはアイソトニック飲料と併用したりアイソトニック飲料を補給すると良いでしょう。
組成としては、塩分0.1%程度、糖分1~3%程度のものが市販されています。

■経口補水液

「飲む点滴」とも言われ、点滴と同等の水分および電解質の補給ができる飲料です。過度の発汗や下痢、嘔吐、発熱といった脱水時に適した飲料ですが、塩分が少なめの種類を選べば脱水になる前から日常的に飲むのに適しているものもあります。組成としては、塩分0.3%程度で、糖分(ブドウ糖)約2.5%以下となっています。

スポーツドリンクの中のハイポトニック飲料に近いですが、スポーツドリンクに比べて、電解質(塩分)が多く、糖分が少ないのが特徴です。
※電解質(塩分)が多いため、高血圧や心臓病、腎疾患をお持ちの方など塩分やカリウムの摂取制限がある方は、必ず医師に相談してください。

自分で作ってみよう!“スポーツドリンク”と“経口補水液”

スポーツドリンクも、経口補水液も、ポイントとなるのは“水分”“塩分”“糖分”です。自宅にあるような材料を使って、分量を変えるだけで簡単にスポーツドリンク(アイソトニック飲料、ハイポトニック飲料)も経口補水液も作ることができます。買うと高いものもありますし、すぐに買いに行けない場合もあると思いますので、レシピを紹介します。ただ、保存がきかないのでその日のうちに飲み切れる量を作るようにしましょう。

■材料

水、塩、砂糖、レモン(搾られて売っているレモン汁でも可) 
これだけです!レモンを入れることによって爽やかで飲みやすい味になります。さらに、クエン酸やカリウムを摂取することもできます。

■作り方

1.水に、塩と砂糖を入れて溶かす。
2. 1にレモンをスライスして(もしくはレモン汁を)入れる。

3.冷蔵庫で冷やす。完成!

■各飲料の分量
・アイソトニック飲料
 水1L、塩1.5~2g、砂糖40~60 g、レモン1個(もしくはレモン汁大さじ3)

・ハイポトニック飲料
 水1 L、塩1 g、砂糖10~30 g、レモン1/2個(もしくはレモン汁大さじ2)

・経口補水液
 水1 L、塩3 g、砂糖(ブドウ糖)10~30 g、レモン1個(もしくはレモン汁大さじ3)

※幅を持たせている塩分や糖分の量は、味の好みや環境条件、運動強度などに合わせて調節してください。
※レモンの量も、ご自身の飲みやすい味に調節して構いません。

環境条件に合わせたトレーニング内容を実施し、適した飲料を選んで小まめに補給することで、運動時の熱中症を防ぎましょう!!

参照資料:
・公益財団法人日本スポーツ協会発行「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke/heatstroke_0531.pdf
・環境省「熱中症予防情報サイト」
 https://www.wbgt.env.go.jp/
・独立行政法人日本スポーツ振興センター「ドリンク」
https://www.jpnsport.go.jp/jiss/nutrition/supplement/grouping/drink/tabid/1220/Default.aspx
・独立行政法人日本スポーツ振興センター「パフォーマンスに差を生み出す水分補給作戦」
https://pathway.jpnsport.go.jp/sports/column04.html

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