全米各地からラスベガスに集まってきた野球オヤジたち。メジャーリーグより一足早いトーナメントに参加取材

全米各地からラスベガスに集まってきた野球オヤジたち。メジャーリーグより一足早いトーナメントに参加取材 DO

全米各地からラスベガスに集まってきた野球オヤジたち。メジャーリーグより一足早いトーナメントに参加取材

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メジャーリーグの春季キャンプも佳境に入った3月上旬、球春を待ちかねた全米各地の野球狂オヤジたちがギャンブルとエンターテイメントの街ラスベガスに集まって、3日間の野球トーナメント「ラスベガス・キックオフ・クラシック」が行われました。

昨年11月の記事で紹介した草野球ワールドシリーズと同じく、Men’s Senior Baseball League (以下MSBL)というアマチュア野球の全米組織が主催するトーナメントです。秋のワールドシリーズに比べると、こちらはやや小規模なイベントですが、それでも35チームが集結しました。

筆者はあるチームの助っ人選手として、このトーナメントに参加しました。試合や選手達の様子を米国での草野球事情も交えて紹介します。

3日間で最大5試合。ケガ人続出の過酷なスケジュール

トーナメントは、年代別に分かれたリーグごとに行われました。45歳以上の部、50歳以上、60歳以上、と続き、最年長部門は70歳以上です。

最初の2日間で予選リーグ3試合を行い、最終日は勝率上位4チームが準決勝と決勝戦の勝ち抜きトーナメントを行うといいう形式です。つまり、各チームとも最低3試合、最多では5試合を行うことになります。


トーナメントはラスベガス周辺にある10以上の球場に分かれて行われた。

筆者が参加したチームは50歳以上の部に出場したTexas Redbirdsです。この部は2リーグ、10チームで構成されていました。結論を先に言いますと、我々のチームは最終日まで勝ち残り、決勝戦をサヨナラ勝ちで優勝しました。

初日にダブルヘッダー、2日目は1試合、そして3日目にまたダブルヘッダー、という超過酷な試合スケジュール。それを全員が50歳以上の選手たちがこなしたわけですので、当然ながらケガ人が続出しました。

ベンチ入りロースターには、全員で18人が登録されていたのですが、初日に3人、2日目に2人が肉離れや捻挫などで次々と戦線離脱し、最終日も試合途中で2人がケガでベンチに下がりました。最後の試合が終わった時点で、元気に走り回っていたのは18人中11人だけです。筆者は幸いその1人でした。

カリフォルニア在住の筆者に、テキサス州オースチンのチームから助っ人として声がかかったのも、ケガ人が多く出るだろうと見越して、あらかじめ余分に人数を集めておいた監督の策略によるものでした。

チームには私以外にも遠くからは、デトロイトからやってきた助っ人もいました。そのようなニーズに応えるため、MSBLの公式ホームページには特定のチームに所属しない選手があらかじめ登録しておくデータベースがあるのです。

大人げない野球オヤジ達


決勝戦を前にしたTexas Redbirdsのダグアウト前。

野球と言うのは意外に危険なスポーツなのだなと感想を抱くことも出来ますが、筆者はむしろ加齢による体力低下のことも勿論ありますが、それだけではない問題もあると思っています。

一言で言うなら、彼ら草野球オヤジたちはどうしようもなく大人げないのです。

ヤジの応酬が嵩じて、両チーム同士で怒鳴り合いになったり、審判の判定に文句をつけて口論になったり、そんなシーンが何回もありました。ダグアウト内の会話は放送禁止用語がバンバン出ます。と言うより、放送禁止用語が入らない会話の方が少ないぐらいです。

皆さんが何らかの理由で、米国英語のスラングを実地で学びたいと考えているのなら、野球のダグアウトは格好の場所の1つかもしれません。

見逃し三振と判定された後で、ダグアウトで延々と怒鳴り続け、見かねた審判にあやうく退場の警告を受けた人もいました。血の気が多い若者たちの話ではなくって、これで皆が50代のいい大人なのだからと思わず苦笑いになってしまいました。

野球をしている時には、気持ちも子供に戻ってしまうので、少年野球の方がよっぽどマナーが良く、大人の草野球に子供を連れてくる人が少ないのも頷けます。絶対に子供の手本にはなれません。

野球オヤジたちがなりふり構わず一心不乱にプレーをする姿が見受けられました。

意外に敷居が高い米国の草野球

年甲斐にもない大人たちが頭に血を上らせて試合をするわけですから、ラフプレーもありますし、自分の体力を省みないハッスルプレーもあります。その結果が前述したようなケガ人続出という事態に繋がるわけです。

もっと気軽に遊びで野球やりたいんだよって時に、アメリカには日本のような草野球という場があまりありません。このMSBLのような組織に参加するか、あるいはソフトボールをやるしか選択肢がないのです。

筆者が考えるに、アメリカには軟球というものがないことがその大きな理由として挙げられます。子供のリトルリーグも硬球、大人の草野球も硬球です。当然当たると痛いですので、ヘルメットやプロテクターなどの道具が必要ですし、通行人の安全のためにはフェンスで仕切られた専門の野球場までもが必要になります。

硬式野球とはどうしても遊び感覚でやるには敷居が高くなってしまうものなのです。そのような意味で、野球人口を広げるために、日本の軟球と草野球文化はもっと世界にアピールしてよいと思うのですが、どうでしょう。


Texas Redbirdsの面々。最後は笑顔で終わった。筆者は前列右から3人目。

それでも野球を愛する人たち

3日間のトーナメントが終わると、あるものは車で、あるものは飛行機でラスベガスを後にし、それぞれの帰途につきました。筆者は比較的近い方でしたが、それでも自宅まで5時間以上のドライブです。MSBLでは各地域で毎週日曜日に試合を行うリーグ戦に加え、1年に6回、このようなトーナメントを開催しています。

今回の「ラスベガス・キックオフ・クラシック」は大会名の通り、その皮切りになるものです。全米に散らばる野球狂オヤジたちのシーズンが今年も始まりました。

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