フットサルで幼児のコミュニケーション能力や自主性を育む!~東京いずみ幼稚園の課外教室~
SUPPORTフットサルで幼児のコミュニケーション能力や自主性を育む!~東京いずみ幼稚園の課外教室~
もうすぐ午後の3時になろうという頃、東京都足立区内にあるスポーツ・グラウンドに一台の幼稚園バスがやってきました。駐車場に止まってドアが開くと、ひとり、またひとりと、色とりどりの帽子をかぶった子どもたちが元気よくグラウンドに飛び出していきます。東京いずみ幼稚園・フットサル倶楽部の年長クラスの子どもたちです。
東京いずみ幼稚園のフットサル倶楽部は、前身のサッカー倶楽部から数えると長い歴史があります。園長補佐の小泉貴史さんはこう振り返ります。
もう30年以上前になります。当時、うちの幼稚園にはサッカー経験のある体育の教員がいたことから課外教室としてサッカー倶楽部が始まりました。区画整理の影響から園庭が狭くなったことやフットサル経験のある教員が入職したこともあり、現在はフットサル倶楽部として続いているのです。
東京いずみ幼稚園では未就園児から小学生までを対象に、スイミングスクールやコーディネーション能力を養うための体育倶楽部をはじめ、合唱団やピアノ教室などの音楽活動も含めて課外教室が盛んに行われています。
フットサル倶楽部も人気の課外教室の一つで、年少の10人と年中の10人でひとクラス、年長の20人でひとクラスの定員はすぐに埋まってしまいます。小泉さんは「幼児期に、いろいろな物事に関わってもらい、得意なものを見つけてくれればと思って環境を整えています。」と説明してくれました。
幼児が物事に集中して取り組むことのできる時間は?
フットサル倶楽部で子どもたちを指導するのは佐渡幹也さんです。「実は、これまでは幼稚園の中で活動していました。今日のように外のグラウンドを使うのは初めてのことです。」短い活動時間の中で子どもたちの運動量を増やしたいという考えがありました。
東京いずみ幼稚園の課外教室では、基本的に1時間を超えた活動はしません。学齢にもよりますし、体力の問題もありますが、「一般論では幼児がひとつのことに集中して取り組むことのできる時間は5分だと言われています」(小泉さん)。
40分や50分の活動を続けるには、ひとつのプログラムを長く取り組むのではなく、短いパーツに区切る必要があります。実際に練習では、遊びの要素を取り入れた短時間のメニューがテンポよく行われていました。
フットサル倶楽部は一回50分です。年少や年中の子は体力も集中力も落ちてきますが、年長になると子どもたちの様子もガラッと変わり、ミニゲームを取り入れながら50分は集中できます。そして同じ50分でも、園庭よりも広いグラウンドを使うことで、ボールを追う距離やボールを蹴る回数が多くなるように工夫したのです。(佐渡さん)
子どもたちも幼稚園から外に出かけることで気分が盛り上がるようです。子どもたちが楽しみながらフットサルに取り組むための環境や雰囲気づくりは大切なこと。「特に年長の子たちは楽しみにしているようですね。」と、佐渡さんも効果を認めます。
園長補佐の小泉貴史さん(向かって右)とフットサル倶楽部で子どもたちを指導するのは佐渡幹也さん(向かって左)
のびのびとフットサルを楽しむことが成長につながる!!
子どもたちがフットサルに楽しく取り組むうえで佐渡さんが気をつけているのは「子どもたちに強制しない」ことです。
ドリブルしなさい、そこはパスだよ、などと子どもの動きを強制してしまわないよう、子どもの自主性や判断力に任せるようにしています。この時期(U-6)は、チャレンジした結果、それが成功するか失敗するかは別として、自分の頭で考えたことを表現してもらい、のびのびと楽しんでもらいたいと思っています。
ヒントを与えたり、問いかけたりするような言葉掛けを意識して指導しているといいます。子どもたちの様子はといえば、どの子も自由にボールを追って楽しんでいるようでした。中には、まだまだボールを上手く止められなかったり、ボールを蹴っても思ったように飛んでいかなかったりする子もいます。
しかし、どの子も体を自由に動かすことが本当に楽しそうです。たとえ転んでも、ボールがぶつかっても、泣きだす子どもはひとりもいませんでした。
フットサル倶楽部の目的は、サッカーやフットサルを好きになってもらうこと。そして、コミュニケーション能力や自主性を育んでもらい、人として成長してもらいたいという思いがあります。この2つが卒園までに大事にしているテーマです。運動能力的でいえば、幼児期のうちから、例えば、鉄棒であれば自分だけが動けばいい運動ですが、フットサルやサッカーは相手に対応して動く運動も求められます。しかも限られた狭いスペースなので、その中での身のこなしも習得でき、今後、小学校や中学校でほかの球技をやるときに活かされると思います。幼稚園でもドッジボールの時間があるのですが、すでにボールに対する反応が違っていますね。(佐渡さん)
フットサル倶楽部の子どもたちの笑顔を見れば、サッカーやフットサルが好きだということが伝わってきます。コミュニケーション能力や自主性についてはどうだろうか。
そのような観点から見ると、子どもたちは、活動の時間が終わったときに、グラウンドにレーキをかけて整備したり、ゴールを分解して片付けたりしていましたが、それを仕方なく嫌々やっているのではなく、みんなが進んで後片付けをしていたのです。
地域のコミュニティとして、子どもたちが卒園しても通える幼稚園
佐渡さんが、そんな子どもたちを見ながら「小学生まで続けられるジュニアチームを作りたいですね」と思いを語ると、小泉さんも「それはいいですね!」と佐渡さんの夢を後押しします。
東京いずみ幼稚園は、卒園後も課外教室に通ってくる子どもがたくさんいます。分野は違いますが、合唱団には中学生も来ていますからね。本当に1歳や2歳の未就園児の頃から通ってくれていた子が、14歳や15歳になっても遊びに来てくれます。あんなに小さかった子がこんなに大きくなって! と驚きますよ(笑)。フットサルを通してお付き合いが継続していくのは、幼稚園の先生たちにとっても楽しみのひとつだと思います。小学生のフットサル倶楽部も、これからの夢の一つとしていいと思っています!